【続報】JASRACに対してヤマハ等の音楽教室が7月に提訴か【どうなる】
※2017/5/16「ヤマハ側の訴訟準備」について追記しました
どうもシャイニングマンです。昨日ネットニュース見てたらこんな記事が…
要は「ヤマハとかが主催してる音楽教室からJASRAC(ジャスラック)が著作権料を徴収しますって言いだした」って話ですね。
これがめちゃくちゃ今話題になってまして、一部では「やっぱりカスラックだな!」とか「権利ヤクザがぁ!!」などの罵詈雑言の嵐が吹き荒れております…(苦笑)
この手の話に造詣の浅い人は「音楽教室から音楽の使用料を徴収する」っていうこのニュース自体にあまりピンと来ないと思うのですが、音楽業界的には由々しき問題でありまして…
って事で、今日はこのニュースを絡めつつ、意外と知られていないJASRAC(日本音楽著作権協会)の事や音楽の著作権について書きたいと思います。
JASRAC(ジャスラック)とは
まずはwiki引用(いきなり手抜き)
音楽(楽曲、歌詞)の著作権を持つ作詞者・作曲者・音楽出版者から録音権・演奏権などの著作権の信託を受けて、音楽の利用者に対する利用許諾(ライセンス)、利用料の徴収と権利者への分配、著作権侵害の監視、著作権侵害者に対する法的責任の追及などを主な業務としている。社団法人であるため一般社団・財団法人法に基づいて非営利目的の運営が法律により定められている。
はい。お読み頂いた通り、JASRAC(日本音楽著作権協会)ってのは著作権違反を厳しく取り締まり、アーティストや著作者(作曲者&作詞者&演奏者)の権利を保護する事を目的としている「非営利」の団体です。
もしこの世にJASRACが居なければ著作権法違反(楽曲パクリ放題&コピー品氾濫)なんかも蔓延してしまいますし、それによって著作者が不利益を被る事も往々にして有り得ます。
なのでJASRACがしっかりとアーティスト(著作者)の権利と利益を守って音楽業界の発展&繁栄をサポートしますよって事なので、アーティストやミュージシャン、レコード会社などの音楽事業者(出版社)にとっては非常に心強い味方になっています。
意外と知らないJASRACの業務内容
例えばレストランなど飲食店やライブハウス、カラオケなどの店舗で音楽の商用利用をする場合(生演奏含む)は、JASRACに音楽の使用料を支払って「店で音楽を流す許可」を取らないといけません。これをやらないと基本的には「著作権法違反」となります。
これを音楽著作権の包括的利用許諾契約(包括契約)と言うんですが、お店とかオフィスとかで契約してる「有線放送」もそうですね。あれは有線放送がJASRACと統括契約をしていますし、YouTubeにしても、ニコニコ動画にしても全部この契約をJASRACと結んでます。
つまり飲食店とかカラオケとかライブハウスとかの料金の中にこの「音楽の使用料」ってのが含まれていて、そこ(僕ら消費者)から間接的にアーティストに著作権料が支払われるという形が取られています。なんか税金みたいですね。
で、ここで気になるのが「商用利用」って言葉。これが結構クセものでして
要は「個人で聴く分には著作権法に違反しないから良い」けど「お店とかで不特定多数の人に聴かせるなら著作権法違反だからお金払ってね?」って事。
もちろん、これが有線と契約してるお店とかカラオケ店だと包括契約によって使用料を支払ってるのでセーフなのですが、店が自前のコンポとかパソコンで流してたりする場合はアウトって事なんです。
音楽の使用料(いくら払うの?)
で、この音楽の使用料って一体どれくらいのお金が取られるの?ってところですが
店舗の場合は「店舗面積が500平米(150坪)までなら年間使用料が6000円」で、500平米以上で段階的に値段が上がっていきます。
これみて「安い」と思うか「高い」と思うかは人それぞれの価値観だと思うのですが
一応JASRACは「法律で定められている事」に基づいて使用料の徴収をしている訳ですから、仮に文句を言ったとしても勝ち目は無し…です。
個人的な所感
とまぁザックリとですがJASRACと音楽の著作権の話はこの辺にして、冒頭のニュースの話に戻りましょうか。
著作権法では「公衆に聞かせることを目的に楽曲を演奏したり歌ったりする“演奏権”を作曲家や作詞家が専有する」と定めていて、この事からこれまでもJASRACはコンサート、演奏会、果てはカラオケでの歌唱に至るまで全て著作権料を徴収してきました。
今回JASRAC側は「この“演奏権”の解釈をこれからは音楽教室まで拡大しますよ」という事を言い出した訳ですが、やはり個人的には「そこまでするのはちょっと…」っていうのが正直な所です。
本末転倒な結果にならない?
「アーティストの権利がー!」という主張は勿論「正義」である訳ですが、一方でこういう締め付けをキツくする事で「本来守るべきアーティスト自体が今後生まれにくくなってしまうのでは?」という懸念がどうしてもあります。
音楽教室が著作権料を収めるとなれば、当然ですが音楽教室はその料金を「授業料に上乗せ」します。つまりそれで結局損をするのは生徒さん(未来のアーティスト候補)でもある訳です。
もしこれで音楽教室が全国的に減るか、もしくは生徒が減ったとします。そうすれば今後日本でアーティストも生まれにくくなるでしょう。そしてそうなったら結局は音楽業界全体の衰退にもつながりかねません。JASRACはこの部分をどう考えているのでしょうか?
音楽教室はやめるな
次世代のアーティストは育てろ
でも著作権料は払え
ってあまりにも救いが無さ過ぎるなぁ…という印象。
ヤマハ音楽振興会の三木渡氏の発言
ヤマハ音楽振興会の三木渡氏(常務理事)は今回のJASRACの発表に対し
「演奏権が教室内の生徒や先生に及ぶというのは理解できない。文化的な活動にもそぐわない」
と語っており、僕も全くその通りだと思います。
ていうか、そもそも「アーティスト側」はそんなつもりでJASRACに著作権の信託を預けてないんじゃないの?…と僕は信じてるんですけどね。この件に関してはアーティスト側ももっと声を上げてほしいけど、あんまり上がってない…よな?(なんで?)
宇多田ヒカルがツイッター上で言及
2/4に歌手の宇多田ヒカルさんがツイッター上でこの事について言及した事が話題になっています。
もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。https://t.co/34ocEwCj8K
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) 2017年2月4日
なんと「自分の楽曲は無料で使って欲しい」との事。最高ですね。アーティストの鏡。こういう人が声を上げてくれるのは正直かなり大きいと思います。
訴訟問題にも発展?
2/11、この問題に動きがあったようですね。
上記の記事によると、ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などによって結成された「音楽教育を守る会」という団体がJASRACに対して民事訴訟を検討しているとの事。(いいね)
これは少し泥沼化の匂いがしてきましたなぁ…
やはりここでの争点は「教室内の練習や指導が“公衆に聞かせる演奏”に該当するのか」という点でしょう。
ちなみに僕は「しない(すべきではない)」と思っているのですが、ニュースにもある通り、現に今の段階でも「カラオケ」や「コンサート」や「カルチャーセンターなどの音楽講座」では既に著作権料の徴収が行われているという前例があります。
裁判ってのはこの「前例」ってのが非常に重要になってきますから、ひょっとしたら裁判になったとしてもJASRACが有利なんじゃないかなぁ…?というのが個人的な感想。
JASRACの言い分
著作権管理の公平性を考えれば音楽教室からの徴収を遅らせるわけにはいかない
思いっ切り「前例」を盾にしてます。これはJASRAC側からしてもかなりの強みになっているはずです。てか「何で今更?」という気がします。
音楽教育を守る会の言い分
著作権法では演奏権について『公衆に聞かせる目的で』と限定している。教室内での練習や指導は当てはまらない
ここでは多くの人が指摘した「教育の場でもあるんじゃい!」という所を強く押し出していますね。僕もその通りだと思うんですけど、これが裁判でどう判断されるかは正直全く分かりません。
7月にも裁判か
またまた動きがありました。遂に今年7月にはヤマハ音楽振興会がJASRACへの支払い義務が無い事の確認を求める裁判を起こす方針を固めたとの事。
ヤマハ側は「教室での演奏には著作権は及ばない」とし、JASRAC側は「人気曲を使い、魅力を生徒が味わっている以上、聞かせることが目的」と反論しているそうですが
JASRAC側の言い分はやや無理があるなぁ…という感じ(苦笑)
もしこれで本当に著作権料を払わないといけないという前提が出来てしまったら、それこそもう何でもアリになっちゃうんじゃないかなぁ…。
これは流石にヤマハの言い分が認められて欲しいなぁ…。
ヤマハ、JASRACを提訴へ 教室演奏の著作権めぐり (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
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まとめ
JASRACの業務内容についてはこれまで色々と叩かれたりもしていますが、僕はこの団体の基本的な理念には賛同しますし、実際にこの団体のお陰で音楽業界の権利関係が円滑に回っている事も確かなので、必要な存在である事は間違いありません。
でも今回の件はちょっと頂けません。
そりゃ音楽教室は「営利目的」で音楽を「商用利用」している事は間違いありませんが、その反面今回「音楽教育を守る会」の言う通り音楽教室は「音楽の教育」を行なっている場でもある訳です。音楽や楽器を教える事がアーティストの権利を侵害しているというのは明らかな暴論。
JASRACは今回の取り決めで年間「10億~20億円」くらいを徴収する見込みとの事ですが、そのお金が正当に著作者に還元されるのか?という疑念も拭い切れませんし、そもそも今まで徴収してるお金だってちゃんと権利者に還元されて来たのかも結構謎だったりします。
現に「徴収されてる筈の使用料が還元されていない」というような事例も沢山ありますし、じゃあそのお金はどこに行ってるんだ?ってハナシにもなって当然。だって「非営利団体」なんだから。そこは最低限ちゃんとやらないと…。
今回新たに「音楽教育を守る会」の訴訟検討…というニュースが入りましたが、カラオケでは既に演奏権が適応され、年間20億円を超える使用料が徴収されているという「前例(強み)」もあるので、恐らくJASRAC側は強気の姿勢を取るのではないでしょうか。
僕も音楽好きの端くれとして注意深く見守っていきたいと思います。
あじゃした!!